WNCar

Superformance MKIII

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Superformance MKIII

COBRAではない。スーパフォーマンス製マークIII。そもそもはイギリス発祥、その後、米シェルビーの手で「シェルビーコブラ」に。紆余曲折あり、レプリカモデルが数多く存在。そのシーンをひっくるめて「コブラ」。それでよいと思う。

強烈なトルクを発揮する、時代錯誤な7リッターV8 OHVエンジン。キャブレターのように見えるが、インジェクション仕様。それもボルトオン的なもので、昨今の統合制御的なものから程遠い。信頼性と実用性を獲得しつつ、古の匂いが残る。それでよい。スーパフォーマンス製のこの車は、日本に代理店が存在し、日本の道を走るための信頼性を獲得している。たとえば、オーバーヒートは無縁。この強心臓であれば、何処製であっても不安なものだが、関東の渋滞路でも全く問題はない。

簡素なFRP製ハードトップを備えた個体、だが不要だろう。サイドウインドウもないわけで、潔く取り払う。あれだけ大きなエンジンを搭載しながらバルクヘッドを通じてサウナ状態になるなんてこともない。実は、よく出来た車だ。

コブラといえば、この横姿。これでいい。これがいい。

出かける前に「バイクより天気予報を綿密に調べる」。なぜなら、バイクなら雨が降っても雨宿りに、車両は雨ざらしでもよい。コブラはそうもいかない。車が本当に趣味でなければ、あまりおすすめできない。触れること、乗ること、所有すること。本人の人生において、それが常に特別なことであれば、これだけ濃密なフィードバックのある車はないだろう。そして楽しませてくれる車はないだろう。

屋根はない、アシストもないアナログの塊。低速時は振動の嵐だが、鼓動感は抜群、回し始めると芯が揃い表情を変えるエンジン。激しく風を巻き込み、猛々しいエキゾーストノートは助手席との会話もままならない。ただ、あっけからかんなバスタブのようなキャビンは、今どきのようなオープンのようにフロントウインドが眼前に迫るわけでなく、極めてノーテンキに空が見える。笑ってしまう、笑うしかない。

アクセルを踏む。V8のビートをまさにバックビートに、助手席に置いたBluetoothスピーカーから流れる音楽と風と混じり合う。朝日であろうと、トップライトの日差しであろうと、夕日であろうと。サマになる。自分の時間に浸れるのだ。